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遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の診療について

遺伝性乳がん卵巣がん症候群とは

「乳がん」「卵巣がん」の中には、遺伝するものがあります。なかでもよく知られているのが、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC;Hereditary Breast & Ovarian Cancer Syndrome)です。遺伝子(BRCA1またはBRCA2)の変異が原因です 。

BRCA1遺伝子とBRCA2遺伝子は、誰もが持っている遺伝子です。これらの遺伝子は、細胞に含まれる遺伝子が傷ついたときに正常に修復する働きがあります。この「BRCA1 遺伝子」あるいは「BRCA2 遺伝子」に生まれつき変異があり、さらに本来の機能が失われると、乳がんや卵巣がんなどにかかりやすいことがわかっています。

遺伝子の変異は必ず子どもに受け継がれますか?

私たちはほとんどの遺伝子を2つ1組でもっていて、父親から1つ、母親から1つ、受け継いでいます。親のどちらかが病的変異のある BRCA1遺伝子あるいは BRCA2遺伝子を持っている場合、その変異が子どもに受け継がれる確率は、性別に関わりなく1/2(50%)の確率です。

BRCA1/2の遺伝子変異がある場合に、乳がんや卵巣がんになる確率

一般集団の方が50歳までに乳がんを発症する確率は2%であるのに対し、BRCA1/2の遺伝子変異がある方では33-50%と高率です。さらに、70歳までに乳がんを発症する確率は56-87%となります。同じく卵巣がんの発症率は27-44%という高率になっております。

BRCA1/2の遺伝子変異を調べるための検査について(メリットとデメリット)

血液検査(約7cc)で検査を行います。専門の業者に依頼するので、結果が出るまで約3週間かかります。
検査を受けるメリット
  • 積極的な経過観察や予防的管理についての検討が可能です 。
  • リスク低減治療により、乳がん・卵巣がんの発症を予防できる可能性があります。
  • 遺伝子変異がないという情報も有益です。
検査のデメリット
  • 情報が漏洩すると、職場や保険等で差別の対象となる可能性があります。
  • その差別が血縁者にも及ぶ可能性もあります。
  • 遺伝子変異のあることがわかっても、予防的治療は保険診療外となります。
  • 病的な変異かどうか、区別がつかない場合があります。

検査を受ける場合は、これらのメリット・デメリットを御理解いただいた後、検査同意書に署名する必要があります。

HBOC検査を受けることがすすめられる方 (NCCNガイドライン参照)

  • 若年性乳がん(50歳以下)・トリプルネガティブ乳がん・両側または多発乳がんの方
  • 男性乳がん・卵巣がん(卵管がん、原発性の腹膜がんも含みます)
  • 乳がんの方で、次に当てはまる血縁者がいる場合
    ・50歳以下で乳がんを発症した血縁者(1人以上)
    ・卵巣がんを発症した血縁者(1人以上)
    ・乳がんまたは膵がんを発症した血縁者(2人以上)
  • 乳がんと次のがんの併発(どちらか片方の家系内で): 甲状腺がん、肉腫、 副腎皮質がん、子宮体がん、膵臓がん、脳腫瘍、 びまん性胃がん、白血病 など

次の家族歴がある方もHBOC検査を受けることがすすめられます。

  • 多発乳がん
  • 2人以上の乳がん(父方/母方どちらか片方の家系内で)
  • 1人以上の卵巣がん患者(父方/母方どちらか片方の家系内で)
  • 45歳以下で乳がん発症(第1度/第2度近親者)
  • 家系内で遺伝子変異が検出されている
  • 男性乳がん

当院で検査を受けるまでの流れ(※毎週金曜日15:00~ 完全予約制)

  1. 当院遺伝カウンセリング外来をお電話にて予約ください。
  2. 遺伝カウンセリング外来では、詳細な家族歴を聴取した後にカウンセリングを行います。その上で、検査を受けるか検討していただきます。
  3. 検査を希望された場合は、検査同意書に署名いただき後日採血を行います。
  4. 再度遺伝カウンセリング外来を受診いただき、検査結果を報告いたします。
  5. 結果報告の際に、今後の方針を相談いたします。

地域医療連携室 ※がん相談支援センター 遺伝カウンセリング外来 担当に繋いでくださいとお伝えください。

TEL:072-988-3284
FAX:072-988-3624
※火曜日・金曜日9:00~16:00

BRCA1/2の遺伝子変異がある場合の対応

乳がん

  • 18歳からの自己検診(月1回)を奨めます。
  • 25歳から6か月毎に医師による視触診を実施します。
  • 25歳から年1回、マンモグラフィーまたは造影MRI検査を実施します。
  • リスク低減両側乳房切除手術の選択肢について相談します。乳がん発症予防の程度や乳房再建の選択肢およびリスクについてもカウンセリングします。

卵巣がん

  • 35~40歳の間に、出産の完了に伴って、あるいは家系内の最も早い卵巣がんの発症年齢に基づいて、リスク低減卵巣卵管切除術を勧めます。
  • 挙児希望・がんリスクの程度や予防効果・更年期症状などについてもカウンセリングを行います。
  • リスク低減卵巣卵管摘出術を選択しなかった場合は、6カ月ごとの経腟超音波と腫瘍マーカー検査(CA-125)の併用による卵巣がん検診を、35歳から、もしくは家系内の最初の卵巣がん診断年齢より5~10年早い年齢から考慮します。
  • 乳がん・卵巣がん発症に対する、薬物予防についても考慮します。

検査を受けなかった場合

遺伝子検査を受けないと決めても、将来あなたやあなたのご家族さまを取り巻く環境や状況が変わったときに、いつでも受けることができます。遺伝子検査を受けない場合は、あなたやご家族さまの検診内容について、担当医と話し合いましょう。

検査の費用

乳がん・卵巣がんに罹患した患者さまで、以下の条件を満たす場合は保険診療内でHBOC診療を受ける事ができます。

BRCA遺伝子検査:本人・血縁者が以下のいずれかに当てはまる場合

  • 多発乳がん
  • 2人以上の乳がん(父方/母方どちらか片方の家系内で)
  • 1人以上の卵巣がん患者(父方/母方どちらか片方の家系内で)
  • 45歳以下で乳がん発症(第1度/第2度近親者)
  • 家系内でBRCA遺伝子変異が検出されている
  • 男性乳がん

リスク低減乳腺/卵巣卵管切除術

  • BRCA遺伝子に変異があり、乳がんもしくは卵巣がんの既往がある
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